戦時下資料ラボ

大谷文庫データベース

 2020年2月末、画廊「かんらん舎」代表の大谷芳久氏から、戦時中に出版された文芸作品を中心とした約330冊の資料を譲り受けました。これらの資料は、昭和13年から昭和21年の間に出版され、貴重な一次資料として、2021年に大谷文庫戦時下資料ラボでデータベース化しました。

 このコレクションには高村光太郎、北原白秋、室生犀星、三好達治など著名詩人による戦争翼賛詩が数多く含まれており、また中勘助、金子光晴、瀧口修造、北園克衛、安西冬衛の名前も見受けられます。

 戦後これらの詩人たちの中に「反戦詩人」として呼ばれた詩人もいて、戦時中に書かれた戦争翼賛詩は一掃されたかのようです。しかし実際には、これらの詩は戦時中に市中に出回りました。

大谷氏は長年にわたりこれらの詩編資料を収集されてきました。

 戦時下資料ラボでは、研究の焦点を「繊細な言葉を操る詩人たちが、時局に合わせて戦争翼賛へ唱和していく『変節』の瞬間」と「1945年の敗戦後、戦争翼賛の詩作を消してしまう『変節』の瞬間」という『ふたつの変節』に置いてきました。

 しかし専門家を含む多くの関係者との対話のなかで、詩人たちが戦争翼賛へスイッチオンしていく瞬間に、詩人達の才能である「時代を読むこと」や「ロマンティシズム」が作用していること、つまりが詩人の内面的な関与について議論が深まっています。

 一般的に詩人の繊細さと戦争翼賛への協力は相反するもので、そこに詩人の「葛藤」を想像されがちですが、実はどちらも日本における近代文明の同じ箇所から根ざしているという議論に深化しています。それは一体、どのよう構造にあるのかを翼賛詩を通して、見つめていきたいと思います。

*データベースが必要な方は船木宛にお問い合わせください*

大谷芳久氏