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「消えないし、」展

  • 2023.10.24~11.15
  • HIGURE 17−15cas
  • 企画:船木美佳
  • 出品者:OJUN,船木美佳

 2020年2月末に、画廊「かんらん舎」代表の大谷芳久氏から戦時中(昭和13年から昭和21年)に出版された文芸作品約230冊を譲り受けたことを契機に、船木を代表として「戦時下資料ラボ」を立ち上げました。

 大谷氏は長年にわたり一次資料として古書である詩編を収集されてきました。戦時下資料ラボでは2021年に全てをデータベース化しました。このコレクションには高村光太郎、北原白秋、室生犀星、三好達治など著名詩人による戦争翼賛詩が数多く含まれており、他にも中勘助、金子光晴、瀧口修造、北園克衛、安西冬衛らの名前もあります。


 戦時下資料ラボでは、「繊細な言葉を操る詩人たちが、時局に合わせて戦争翼賛へ唱和していく『変節』の瞬間」と「1945年の敗戦後、戦争翼賛の詩作を消してしまう『変節』の瞬間」という『ふたつの変節』に焦点を当てています。一般的に詩人の繊細さと戦争翼賛に見られる詩の音調は相反するもので、そこには種々の「葛藤」が想像されますが、実際にはどちらも日本の近代文明の無意識的に根ざしているという議論に深化しています。

 タイトルの「消えなし、」の「し、」は「詩」「死」「私」「消ぇねーし」の「し」を重ねています。


①「双子の声ー消えないし、」アニメーション 3’47

本作品は映画『桃太郎 海の神兵』を意識しています。『桃太郎 海の神兵』(監督:瀬尾光世、影絵:政岡憲三)は、1945年4月に海軍省の後援のもとプロパガンダ映画として公開されました。高いクオリティに支えられた「鮮明な印象と記憶度が高い」教育的目的の映像です。

同時期、繊細な言葉を操る詩人たちの多くがやがて戦争翼賛詩を唱和した事実は他人事ではありません。相反する性質を持つ双子は同じ親から生まれました。そして私の中にも双子はいるのだと問い続けます。


②「袋とじ詩集ー消えないし、」 257✖️182mm  

中勘助・高村光太郎・三好達治・瀧口修造・安西冬衛・北園克衛・金子光晴らの「詩」と「戦争翼賛詩の袋とじ」を対にし、編集した書籍作品


③「北原白秋」 429✖️297mm 3種 北原白秋著「牡丹の木」(昭和18年4月24日 河出書房出版)より「詩」と「戦争翼賛詩」を印刷。戦争翼賛詩の方は文字に針で穴を開け、光線の加減で可視化されたり、されなかったりする。


④戦時下資料 作品の元となった詩集14冊(昭和13~21年出版)

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